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【連載】vol.13 勝手に学べばいい

  • 執筆者の写真: 小保根亜美
    小保根亜美
  • 9月22日
  • 読了時間: 8分

ストレングスジャーナリストの小保根亜美です。


9月も後半、今年も残り3ヶ月ほどとなりました。

今年やり残したことなどはありませんか…?

もし学びたいことがあるのであれば、今回の内容もどうぞ

ご参考ください。


今月のテーマは…勝手に学んでいけばいい


今回の記事は、前回からの続きとしてお楽しみください。



はじめに


前回は『伝わらない』の壁についてお話ししました。

今回はその続きとして、アメリカ人画家とのやりとりを通じて見えてきた、

『勝手に学べばいい』という学びの本質をお届けします。



アメリカ人画家との出会い


Q.少し前、アメリカの方とのzoomで講座をされてましたね!

いかがでしたか?


A.そう、彼女はアメリカ人の画家さんなのね。

権威ある先生から、とある歴史ある画法を習っている方。

その画法をリスペクトしつつ、新しいことを取り入れたいと考えてるところで

墨カリグラフィーを見つけたから、

可能だったら取り入れたいと思ってオファーしました、と。


質問がさあ、やっぱり墨や紙の質問だったり、

それぞれの違いや久美はどれを使ってるの?とか、

その理由はなに?とか言ったことね。


そして、実際に文字を書いて見せたの。

すると、「その字は私が知っている書道じゃない」って言う。

「私が知っている書道は、もっとかっちりきっちりした字だった」と。


おー、なるほどと。

習字のことだと思って、

習字の書き方と書道の書き方で「平和」って書いてみせたんだよね。


そしたらその人が

「久美は、習字の時は筆の下の方を持ってるけど、

書道の時は上の方を持つんだね」って。


私は気付いてなくて、えっ!と思ったんだよね。

そして「それはなぜ」って言われたけど、多分、無意識でやったんだね。


それでまぁやっぱり書道と習字の違いを聞かれたから、

概略だけだけど、習字には正解があって、政府が定めた正しい字を

全員に伝えるために、小学生で習うもので、

書道はアートだから、私はこういう感じで書くよと伝えて

ああ、なるほどね。と、そこで終わった。


彼女とのセッションをやっていて改めて思ったのは

「質問をきちんとできる人」は、知識と技術を得られるんだな、と。

1時間のあいだ、彼女はとにかく、疑問をたくさん投げかけてくるんだよね。

それは、自分の知識と技術として身に入れ込みたいから。

すごいスピードで成長していくと思うよ。



アート書道と習字


教室の中でさ、「先生ならどう書きますか?」って聞く人が何人かいるんだよね。

真っ白な状態の、何もまだ自分では試していない状態でね。


でも私、それは教えられないよって言うの。

私ならこうするっていうのを伝えちゃうと、

それは私の作品になっちゃうから、先生ならどう書きますか?

と聞かれても書かない。


どう書きますか?って聞かれた時に私がするのは、

「あなたはどうしたいの?」と問うこと。


私のその意図は、ゼロイチが難しいじゃん、なんでも。


そして、ゼロイチを大切にしてくださいって言ってるから、

あなたが生み出したものを、私は消したくないからっていう意味で

言ってるよって。


私が書いたものを真似したら、

それは1から10にしてるから。

ゼロイチを大切にしてほしいのさ。



Q.自分で満点を出せればいいんですもんね?


A.うん、そう。そうなの。

それでさ、今までは、教わった通りやるとか、

見たまんまを真似するっていうことで生きてきましたけど、

ここに習いに来たらゼロイチの喜びが分かりましたっていう風に思ってほしい。


ほら、ピカソはさ、生きてる間にめちゃくちゃ売れたじゃない。

じゃあピカソは絵の教室やっていたのかなっていう。


あんだけ有名で売れてて、

習いたいっていう人がいっぱいいそうじゃない?


教室があったら通いたいって人がいっぱいいて、

でもやってないはずなのさ。


それはさ、まあそうだよね。

だってそこでは伝わらないもん。

ピカソの頭の中のことなんか伝わらなすぎて

多分イライラする。



Q.生徒さんとピカソの脳みその中の乖離がもうストレスになると?


A. お互いに。

生徒はピカソが言ってることが意味わかんないし、

ピカソも生徒が何を望んでいるかも、意味わかんないだろうしね。

今、そんな感じなんじゃないかな。私が。笑



Q.そういうことなんですね。しっくりきますね。

それは、芸術家としての関吉久美さんと、

書道の教室の先生としての関吉久美さんが

何か相容れないという感じなのでしょうか。


A.そう。それで、習字教室だったらなんぼでも教えるよね。

習字のお手本通りに書く書き方なんて、すぐ教えられるよ。



Q.実際小学校でも教えられてますもんね!


A.そうそう。そういうのはできるよね。



文字だけで映えさせる挑戦


元々書道の作品を、「流通に乗せたい」と「売りたい」という気持ちがあったから、

書道は地味で映えないけど、売れるためには見た目を映えさせようって思ったの、

派手に。


水と墨と紙とを使って、映えさせるためにはどうしたらいいんだろうとさ、

私はまず1人で研究したわけ。


それで、構造を工夫して

「こういうふうにやれば、映えさせることができるんじゃないか」と思った。


だから、構図の発想の仕方とか、模様の付け方とかを10ヶ月ぐらいかけて伝えて、

それで生徒さんがそれぞれ作品を仕上げて、銀座で作品展をやった。


そしたら作品展で聞こえてきた声が

「読めない」って言うわけ。


いろんないいことを、もちろん褒めてくれてもいたんだけど、

そこだけがすごい残って。


”書道なのに読めないんだ”っていう文脈が残ったわけ。


私は確かに書道家だし、

書道をリスペクトしているから、

”ああ、読めないのはダメなのかな”って思ったのさ。


スタートは『映えさせよう』と思ってやってみてるから、

全然やったこと自体は後悔はしてない。


だけど、あ、確かにって読めないなと。

そもそも、字だけというのはテクニックとして難しいってわかってたけど、

じゃあ分かった次、2026年は文字でいこうって決めた。


そして、映えさせるということも諦めてないからさ、売りたいから。

文字だけで映えさせるって、相当難しいことに、私は挑戦しようと。


そのためには、ただ普通に文字を書いたんじゃ映えないから、

まあ、書道のテクニックがあるから、それを伝えてやってきたけど、

それが難しかったっていうことに気づいた。



Q.やっぱりゼロイチの喜びを感じてほしいっていうのは変わらないですか?


A.うん、変わらない。

変わらない、

変わらない、

変わらないけど、

もう難しくしすぎたんだよね。


文字だけで映えさせるっていう、その命題が難しすぎたんだよ。

それを生徒さんにも求めたのも、難しかった。


「先生みたいに書きたい」っていうわけ、みんな。

でも「どうやって教えたらいいんだろう」と思っちゃう。


さらさらっと先生のように綺麗な線で書きたい、という人も多い。

「どうやって、ああいう風に書けるんですか?」

「どうやって思いつくんですか?」とすごく聞かれる。



Q.久美さんは書道のその深みを理解して、経験を積んで、

できるようになったってことですよね?


A.そうなんだよ。

だからね、やってくださいねって。

2000本の線の練習だけまずやってくださいね。

2000本、線を書く練習をしたら書けるようになりますよ、って。


そうそう、さっきのアメリカ人の画家さんはちゃんと

「その線を書くためには、どうやって練習したらいいですか?」と

練習の方法を聞いてきたよ。


わかる?「どうやったら書けますか?」じゃないのよ。

「どうやって練習したらいいですか?」なのよ。そこの差を感じたね。すごいよ。



ChatGPTに「ピカソがなぜ絵画教室をやらなかったと思いますか?」と

聞いた答えの要約ね。

・創作への集中(教えることで時間が取られる)

・反アカデミーの姿勢

・才能の模倣不可性

・スタイルを固定しない芸術家としての意志

・強烈なエゴ意思を持つ人物

・「勝手に学んでいけばいい」という思想


「才能の模倣不可性」だと思うよ。

才能、っていうと烏滸がましいけど、私の脳内、感覚、思考は、

どうしても言葉にして伝えるのは難しいし、受け取る側も難しいよね。



さいごに


前回と今回の連載を通して、伝えることの難しさ、

そしてゼロイチを楽しんでほしい、という

生徒さんへの愛があるからこその思いを深く感じました。


答えは、人から与えられるものではない。

自分で見つけるために、自分へ問い、

手を動かし、行動を重ねていくことで、”勝手に”学んでいく。


結局のところ、その積み重ねなのだと、

それが本物の学びなのではないかと痛感いたしました。


自分で学んでいくためのサポートとして、難しいことも伝えていく。

それは技術的なことであり、知識的なことであり。

それをどう活かすかは、自分次第。


すでに手にしているものをいかに活かしていくか。

これはアートに限らず、さまざまなことに通じると感じた

今回のインタビューでした。


皆様はどのような感想を抱かれたでしょうか。

よろしければぜひご感想をお聞かせくださいね。


次回はこの連載の1年の締めくくりとなります。

どうぞお楽しみに!!


ここで、関吉さん本人からのアンサーをご紹介します。


【関吉久美のアンサー】

「勝手に学べばいい」で締めくくられていますが、補足説明がないとちょっと突き放された感じですよね?(笑)

私も年々学んできて難しくなってきてるけど、同じように私の門下生たちも年々レベルアップしてきているんです。これは間違いのない事実です。今までは、表面的な、初歩的な、アドバイスで良かったのに、いよいよ、私の脳内の奥底の感覚的なところを引っ張り出して「言葉にしないとならない」という、ある種の危機感があります。

私自身ですら言葉にできてないのに。かなり難しいです。門下生たちはそこを求めてきています。(皆さん、気づいてますか?)

かのピカソが当時、自分のアトリエを解放していたそうです。自由に見たい人は見に来ていい。描いている所に遭遇すれば、どうぞ自由に見てもいい。こっちからは何も言わないし、きかれても答えない。

そう「勝手に学んでください」なんです。本来言葉になんかできない部分なのでね。

私の理想はピカソ的「勝手に学んでください」です。解放しますので、どうぞご自由にご覧ください。いつできるかな…


勝手に学べばいい

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