はじめまして、今日から株式会社フィンセントのライティング担当として執筆させていただくことになりました、問いかけマスターコーチ兼ストレングスジャーナリストの小保根亜美(こぼねあみ)と申します。
本日より、こちらのサイトへの連載を開始させていただきます。
こちらでは、筆者が、書道家 関吉久美との対話を広げる中で、お伝えしたいと思ったことを、毎月1本、2,000文字程度の記事にして投稿していきます。
投稿する内容は、彼女の書道に対する思い、作品の解説、また彼女はなぜ捻くれているのか…などなど、書道家 関吉久美 本人でも知らなかった関吉久美の本質をお伝えしていきます。
ただし、あくまでも彼女への問いかけの結果として出てくる答え次第なので、大幅に方向が転換する可能性もあります。そんな時には、その意外性も楽しみながら、読み進めていただけると嬉しく思います。
さて、第1回目のテーマは、「矛盾」。
このテーマで、早速本題に入っていきましょう。
はじめに
矛盾(むじゅん)とは、二つ以上の事柄が一致しない状態、または、一つの事柄が自身の内部で一貫性を欠く状態を指す言葉である。 引用元:辞典・百科事典の検索サービス - Weblio辞書
彼女との対話を進めていく中で、思い浮かぶ言葉はこれだった。
とにかく彼女から感じられるのは、矛盾なのだ。
ギャップとも言えるのかもしれないが、わたしはあえて矛盾と表現したい。
なぜなら、彼女から出てくる言葉と、わたしに伝わる彼女の印象は矛盾しているからだ。
彼女は、これまでの15年の仕事を振り返り、「自分の仕事だから、自分の心地よさを第一優先にして進めてきた」と言う。それが「なぜか周りの人も幸せにしていた」とも。
彼女の仕事のメインは大きく3つある。
一つ目は、アート書道の作品を作って原画を売ること。
二つ目に、お店の看板や命名書など、依頼を受けた作品を作ること。
そして三つ目に、書道教室である。
今回注目したいのは、三つ目に挙げた書道教室について。
最初の矛盾
彼女の周りには、長年彼女を慕う生徒さんがとにかく多い。
「先生がやることなら」、とついてきてくれる生徒さんがたくさんいるのだ。
自分のことを第一優先にしてきた人が、なぜ慕われる?
普通、自分のことを第一優先にしてきたのなら、自分勝手だと思われ、誰もついてこないのでは?そう思ってしまう。
だが、彼女の書道教室はその予想の通りではない。
一番最初の講座こそ自分から開催を提案したが、以降、自らは一切営業をかけていない。
さらに、広告も出さず、口コミや依頼のみで、最高22箇所まで教室を大きくしている。
今となっては北海道を飛び出して、東京、神奈川、名古屋、大阪、神戸での教室開催も毎月ある。しかも、飛行機に乗って、わざわざ教室に足を運んでいる生徒もいるほどだ。
ここでやはり矛盾を感じる。
自分を第一優先にしてきた人が、なぜこんなにも慕われるのか?と。
話を進めていくうちに、その答えは見えてくる。
ここまで生徒さんが長年慕ってきているのには、やはり確かな理由があった。
それは常に、生徒さんが満足感を得て帰ってもらえるような教室づくりをしているのだ。
一見、当たり前と思われるかもしれない。
それも、彼女は意図してやっている。(え?自分第一優先じゃなかったの?)
生徒さんが満足する理由
生徒さんたちが満足する仕組みは、根拠をわかりやすく伝えるということがその一つだ。
絵描きや書道家など、表現者はたくさんいるが、そのような方の中でも「教室はできない」と言う人は多いという。
なぜなら、教室では、「教える」という作業が発生するからだ。教えるためには、言葉にして「伝える」必要がある。
表現者の中でも、その「言葉にして伝える」ことが上手くできないために、「教室はできない」と言う人が多いのだ。
彼女は書道家という表現者でありながら、同時に教室で先生をしているのだ。
それができるのは、とにかく書道を言葉にしてきたからなのだ。
ほほう、そうなんだ。
そこでわたしは疑問が浮かんだ。
「書道は伝えやすいのか?」と。
そこで、ストレートに聞いてみた。
彼女の答えは、その表情、動きからすぐにわかった。
「いやいやいやいや…難しい…」と言いながら首を横に振っている。
笑ってしまった。
そして、その後に彼女自身が気付いて発した言葉で、わたしはまた矛盾を感じるのだ。
「だけど、わかりにくい書道を伝えるのはうまいかも。」そう言ったのだ。
ここでわたしの心の声をご紹介しよう。
(ちょっと待って!!それって言語化のプロじゃないですか!!
わたしは久美さんの言語化をサポートするためにいるんですけど…!
久美さん言語化が苦手だって言ってたじゃないですか!
え?得意なんですか?!……矛盾!!)
こほん。(筆者咳払い)
言語化の過程は実験と検証の連続
筆の選び方一つ、墨の選び方一つ、この滲み方をするにはどのような紙が適しているのか、このバランスを取るにはどうしたらいいかなど、とにかく言葉にしてきたという。
その過程は、とにかく実験と検証の繰り返しだ。
生徒さんから「どの墨がいいか?」と聞かれることがある。
その時に答えられるように、さまざまな墨を使って実験する。
彼女の本音はこうだ。
「え?摺る墨は面倒だから、墨汁でいいしょや。適当に、書道用品店で売ってる、高すぎず安すぎずの墨汁でいいよ」。
だが、生徒に聞かれた以上、先生である彼女がこう言ってしまっては、生徒も拍子抜けしてしまうだろう。これでは生徒は満足感を得られない。
彼女は、ここに使命を持って答えている。
根拠を持ってこたえる責任があることを使命として、生徒にわかりやすい言葉で伝え続けてきたのだ。
さらに彼女は言う。
「書道に関することなら、なんでもすぐ言える!だってめっちゃ言葉にしてきたもん」と。
その根拠を持った答えを言葉で伝えるには、自分が知っている必要がある。
自分が体験している必要がある、自分が見ておく必要がある。
生徒に伝えるために、ひたすら勉強したのだ。
その根拠はどこからくるものなのか?もちろん本を読んで知識を得たり、動画から学ぶこともある。でもやはりそれだけではない、彼女自身で買ってみて、使ってみて、見てみて、研究して、ひたすら実験した彼女の結果を、彼女自身の言葉にしているのだ。
ただ言いたいことを言っているわけではない。伝わることを言っているのだ。
伝えるために、伝わるように、ひたすら実験と検証を繰り返し、言葉にしてきたのだ。
それが、ここまで続いている秘訣の一つであることは間違いないだろう。
結びに
彼女は、これまでの15年間、書道家として自分の作品を作りながら、書道教室を通して、書道を伝えると言うことを続けてきている。
しかも今の今まで、自分が「わかりにくい書道を伝えるのが上手だ」という「宝」を持っているとも知らずに。
自分の中の「宝」を知ってしまった彼女は、今後、どんな世界を広げていくのであろうか。わたしは楽しみで仕方がない。
どうか読者の皆様も、これからの関吉久美にも注目してほしい。
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ここで、関吉さん本人からのアンサーを紹介します。
【関吉久美のアンサー】
「芸術家」と「教える人」は、全く別の作業であるということが亜美さんに伝わってとても嬉しいです。そしてこの文章を読んでくれた方々にもそれが伝わると更に嬉しいです。書道という芸術の抽象的なところ、わかりにくいところを受講生は質問してきます。わからないからきくんです。
だから私は「言葉にして伝えなければならない、満足して帰ってもらうためにはそうしなくてならない」と必死で根拠づくりをしてきました。言葉にしてきました。鍛えてきました。私、言葉にして伝えるのは上手いと思います。ただし、書道に限っては、です…笑
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